2019年11月25日

園庭の秋 

鮮やかな紅葉に染まったけやきに誘われて、
森の樹保育園の園庭も15年目の秋を迎えました。

ホールの屋上から園庭を見下ろす。園庭の真ん中に干されているのは、園の渋柿を切って干してある干し柿です





柿、葡萄、林檎‥‥‥森の樹の園庭は秋真っ盛り。



秋になると、子どもたちはある日突然、柿や林檎が色づいた美しさに気がついて、
「美味しそう!食べたい!」と言いだすのです。

 

森の樹では柿や林檎を収穫する時、大事にしていることがあります。
それは、柿の木や林檎の木のてっぺんに、いくつか実を残しておくということ。

「甘柿は鳥のためにてっぺんにひとつ残しておくことが大事」と昔からいわれています。

それを木守り柿(こもりがき)というのだと、小さい時に私は祖母から教えられました。
「木を守ってくれるという意味で残しておく。全部人間がたべてしまっては罰があたる」
そう祖母はいっていました。

 

昔の人の自然に対する敬虔さを物語る言い伝えです。
その敬虔さの意味を子どもたちにも伝えたいと思い、
森の樹の柿やりんごの木のてっぺんには、実がいくつか残っているのです。
鳥が木を守ってくれるようにという願いを込めて。

そして、子どもたちには、何のためにこうするのか、
その意味を伝えるようにしています。
かつて祖母に私が教えられたように。

 

私たち人間が自然に対する敬虔さを失って傲慢になっていくと
人間のほうが滅びてしまうかもしれない・・・
子どもたちのほうがそのことをずっと強く感じているように思われる昨今です。
自然に対する敬虔さを失っているのむしろは大人のほうかもしれません。

‥‥‥と、ここまで書いた翌日の朝日新聞の天声人語(2019年10月24日)が
下記のような書き出しで始まっていました。

《柿の収穫が終わった木に、ぽつんと一つ実が残っているのをご覧になったことはないだろうか。それは「木まもり」というのだと白洲正子の随筆に教わった/それは自然に対する一種の礼節ともみられるし、実も葉もふるい落としたあとはさぞかし淋しかろうと、想像した人間のやさしい思いやりのようにも見える》

園には大きな実がなる渋柿もある。なぜ園に渋柿? これは干し柿用の柿
お日様に干すと渋い柿が甘い干し柿になる。お日様の力って凄い!切った渋柿を、毎日毎日お日様にあてて忍耐強く待つ
甘い干し柿の出来上がり!

























































葡萄


春から夏にかけて蔓を長く長く伸ばしていく葡萄。
秋風が吹き始める頃になると、長い蔓が茂った葡萄棚いっぱいにたくさんの実をつけます。




林檎


ひときわ目を引く綺麗な赤色に色づいてきた林檎。
美味しそうな赤色に惹かれて子どもたちの手も伸びます。














林檎の実は樹の大きさによって変わります。
幼木の頃には小さな実(林檎)しかできなかったのですが、
樹が育つにつれて実もだんだん立派になってきました。
林檎は干し林檎にすることもあります。
お日様に干すと、いっそう甘く美味しくなるから不思議!
忍耐して楽しみに待っていたおかげでしょうか。
干し林檎は子どもたちが大好きな食べ方の一つです。













矢作すすき


中庭に植えてある「矢作(やはぎ)すすき」。葉っぱに矢のような白い模様が入っているのが特徴です。











すすきにも種類があり、矢作すすき以外のすすきは、切って花瓶に挿しておくと、穂が綿のようにふわふわしてきて穂の形が崩れてしまうのですが、矢作すすきは花瓶に挿しても形が崩れず、その姿を保つところから、お茶席などにも使われています。
森の樹では秋恒例の行事の一つにお月見の会があります。お月様とすすきは秋らしさの象徴でもありますから、園の創立期から矢作すすきを中庭に植えてあるというわけです。
毎年、すすきを刈り取ってお月見の会にお供えするのは年長の役目。
矢作すすきは毎秋、年長の子どもたちがやってくるのを楽しみに待っているのかもしれません。



柚子


香りのよい柚子も園庭の樹木。
実をつける枝にトゲがあるので、小さい子がさわらないように中庭に植えてあります。
だから収穫は年長組の仕事。



夏に花をつけ最初は緑色だった実も収穫期の冬が近づくにつれ、
熟して黄色く色づいてきます。
収穫した実はジュースにしたり、給食の薬味にしたり。
楽しみ方はいろいろですが、森の樹では秋刀魚を食べる時の名脇役としても添えられますから、四、五歳児になると、魚や肉を食べる時に柚子の実を搾ってかけて食べると美味しいことをよく知っているのです。