2021年08月09日

「服を後ろ前に着ている」子どもについて、質問をいただきました

小さい子の保護者の方から、下記のような質問が寄せられました。
そこでこの日記を使って答えさせていただくことにしました。


お迎えに行くと、服を後ろ前に着ていることが多いのですが、
大人が直したり、子どもに直させたりしていないようですね。
どうしてですか?

それは、この時期の子どもにとって「一人で着られた!」という達成感を味わうことが、「正しく着る」ことより、ずっとずっと大切なことだと考えているからです。

なぜ「達成感を味わう」ことが大切なのでしょうか?
それは、「自分で出来た!」という達成感を味わうことで、子どもの心の中に自然に
「もっといろんなことを自分でやってみよう!」という「意欲」が生まれてくるからです。

この「意欲」が、「自分でやればできる!」という気持ちを育んで、やがて子どもが園を旅立った後も、失敗をおそれず、様々な困難に立ち向かう力になってくれるのです。

でも、子どもたちが「達成感を味わう」には、協力者が必要です。
「一人で着られた!」と目を輝かせている子どものそばで、「一人で出来たね!すごいね」と、その子の行動を認め、「出来た喜び」を共感してあげる大人の存在が必要なのです。
 子どもたちは「自分でできた喜び」を、自分以外の大人や友達に共感してもらった時、
初めて充実した「達成感」を感じることができるのです。
この「自分のしたことが認められた」という喜びが、「もっともっと自分でやってみよう!」という「意欲」につながるのです。
 
この「意欲」のことを、「自己肯定感」といいますが、「自己肯定感を育てる」ことは、森の樹保育園がいちばん大事にしている保育の目標でもあります。自己肯定感という自信に満ち溢れた子どもは、「やれば出来る!」と、何に対しても「意欲」いっぱいに育ちます。


ですから、園では、服の着方を見て「前とうしろが逆だよ。」「直したほうがいいよ。」などとは言わないのです。大人が直してあげることもしていません。
それは、子どもに「一人で着られた!!」という達成感をまず存分に味わってもらいたいからです。
子どもは誇り高い存在ですから心配はいりません。そのうちに自分でおかしいぞと気が付いて、考え始めます。「どうやって着たらいいか」と大人に聞きにきたり、友達のやり方を見て覚えてしまったりと、解決方法はいろいろですが、「自分でやりたい」という気持ちはもう
育っていますから、いつの間にか、上手に着られるようになるのです。

そうはいっても、私たち大人はつい手出しをしてしまいたくなります。
気持ちはよくわかります。
でも、「着方が間違っているよ」といわれたり、直されたりした途端に、子どもたちは、「自分で着ると間違えちゃうんだ!」と思ってしまうかもしれません。「自分で着る」という、その行動を否定されたように感じる可能性もあります。

園でも、大人が「直してあげようか?」と声をかけたこともあったのですが、「自分で着たんだから、これでいいの!!」と言わんばかりに、子どもたちに見事に〝拒否〟されました。子どもたちは達成感を味わいたかったのですから、当然ですね。

子どもたちは、「自分でやったら出来た!」という達成感をたくさん経験し、その経験を周囲に認められることによって「自己肯定感」という一生の宝物を獲得して、成長していきます。その過程はどんな子どもも同じです。

「自分でやりたい!」——子どもたちに芽生えてきたこの気持ちを大事にしていけば、「自己肯定感」は必ず育っていきます。「自己肯定感」さえ育てば、もう大丈夫。保育園を巣立った後も、伸び伸びと子どもたちは成長していくはず‥‥‥私たちは、そう願い、確信しながら、日々の暮らしを紡いでいます。