2022年11月26日

おはし の おはなし〜その二


スプーンの【お兄さんお姉さん持ち】
出来るようになるには?



子どものカラダが発達には、いくつかの大きな傾向(〝法則〟といえるようなものですね)があることはみなさんもご存知のことと思います。
そのうちの一つが、カラダは中心部から末端部へと順に育っていくという傾向です。
「スプーンを持つ」ときも、脳という中心部から指令が出され、それが神経系を経由して手指にまで伝わることで「スプーンを持つ」という運動が始まります。つまり、中心部から末端部へ、という流れがここにもあります。
最近はスポーツの分野でも「体幹を鍛えると手足の動きがよくなるよ」といわれるようになってきましたが、長く保育の世界で子どもたちと一緒にカラダを動かしてきた私たちにとっては、それは日々子どもたちに教えられてきたことでした。
カラダの中心部(体幹)をしっかり育てることは、手指を思い通りに使う動作にとてもよい影響をもたらしてくれるのです。つまり、「スプーンのお兄さんお姉さん持ち」ができるようになる最初の一歩は、「体幹をしっかり育てること」ことなのです。







手でカラダを支える運動が効果的



「体幹をしっかり育てるため」には、やはり運動が効果的です。中でも「手でカラダを支え、移動する運動」は手の器用さを育む土台づくりに役立ちます。
幼児期のハイハイや手押し車なども、効果が期待できる運動の一つですが、私たちが日々の保育の中で大切にしているものに「音楽リズム運動」があります。音楽リズム運動には「うま」「かえる」「お馬の親子」など手でカラダを支える運動がいろいろ組み込まれているのです。
「ブリッジ」も手でカラダを支える運動の一つですが、これは手指や腕の力も育てます。
こうした「手でカラダを支える動き」のポイントは「十分に開いた手のひらでしっかりとカラダを支えているかどうか」ということ。私たちが保育の中で気をつけて見ている点です。
もう一つ大事にしていることは、「子どもたちが楽しみながらやっているかどうか」ということ。「楽しい」という気持ちがあると、やる気につながる脳内ホルモンが分泌されるのですが、逆に、同じ運動をしていても、遊びの楽しさがなく、〝訓練〟のようになってしまうと、運動しても効果があまり期待できないともいわれています。運動に限らないことですが、子どもたちにとっての「楽しい」は、「やってみよう」という意欲につながり、やがては自信を育む原動力にもなる、ということだと思います。


動物の動きを真似たり、ブリッジをしたり。楽しみながら体幹を養います




保育の中で「カラダを育てる」時代へ



最近の子ども達の日常生活をみると、残念なことにからだや手を使うことが随分少なくなっています。女の子も男の子も一緒、年齢もさまざま、という子どもたちの集団がふつうだった頃は、遊びといえば戸外でカラダを動かすものでした。年上の子から年下の子へ遊びも受け継がれて、とりたてて鍛えようと思わなくても、自然にカラダづくりもなされていたのだろうと思います。
子ども達に任せていれば自然にカラダはできるから大丈夫——大人もあたりまえのようにそう考えていた時代は確かにあったのですが、時代は変わりました。
これからは、大人が子ども達のカラダづくりのことを、きちんと考えていかなくてはならない時代です。 スポーツをやっているなら大丈夫では?という考え方もありますが、遊びの中にある多彩な動きに比べると、スポーツで求められる動きは意外に限られています。小さい頃からスポーツをやってきた中高生の中に日常のなんでもない場面でケガをしてしまう子どもがいる、と指摘されている背景には、遊びとスポーツの違いという要素もあるといわれています。
そのようなわけで、日々の保育の中で自然にカラダづくりをしていくために、私たちは集団遊びや音楽リズム運動などに取り組んでいるのです。